令和4年10月3日より、休職されている方を対象とした復職支援(リワーク)プログラムを開始いたしました。適応障害、うつ状態、うつ病などで休職されている患者様も多くいらっしゃり、以前から要望が多くありました。復職に不安のある方、休職期間をどのように過ごせばよいか悩まれている方をサポートいたします。
リワークとは?
リワークとはReturn to workの略語で、精神面の不調により休職されている方を対象に、職場復帰に向け、グループで行うリハビリテーションプログラムです。「日常生活は支障なく送ることができる」くらいに体調が回復し、その時点で復職してしまうと、疲労や症状の再発から再度休職に至るケースも少なくありません。リワークでは、「就労可能レベルの回復」を目指し、体力や集中力を回復していくリハビリテーションを行っていきます。
やむを得ず、休職することになり孤独感や自責感を強め、絶望感も感じられているかもしれません。また、復職にむけて一人で生活リズムを整えてリハビリテーションをすることは容易ではありません。リワークに参加することで「一人じゃない」という安心感や団結感が生まれ、グループでリハビリテーションを行うことで、利用者様同士の相乗効果が生まれます。
スタッフと一緒に心身の状態に合わせた活動計画や目標を立て、復職に向けてのアプローチや今後の対策について考えていきます。
当院のリワークの特色
①メンタルクリニックが運営しています
医療機関以外でもリワークプログラムは実施されていますが、診断、治療、リワークを一貫して行えることが、クリニックが運営するリワークの特徴です。リワーク参加中、体調が良い時もあれば悪い時もあります、体調悪化時にはその日のうちに主治医に相談することが可能です。
②少人数で実施していきます
当院のリワークは定員5人で運営しています。緊張しやすい方、多くの人がいる場で発言や行動することが苦手な人には参加しやすい環境です。
③様々な資格をもったスタッフが相談にあたっていきます
デイケアを運営してきた実績があり、心理士、看護師、精神保健福祉士と様々な専門職が協力してプログラムを行っております。スタッフは皆やさしく親切ですので、なんでも相談してください。
リワークプログラムの対象者
・うつ病、うつ状態、適応障害などの診断で通院をしており、主治医から参加可能の判断をされている方(他院通院中の方も参加可能です。その場合は紹介状を持参のうえ、当院の医師の診察を受けていただきます)
・休職しており復職を目指している方
・ある程度は生活リズムが整っており、継続した通所が可能な方
休職から復職への流れ

休職から復職までの期間をA、B、Cの3つの期間に分けて考えてみましょう。
A:うつ病の急性期の状態です。この時期は休養、すなわち「負荷を減らし、頭と体を休める」ことが必要な時期です。適切に内服治療を行い、休養に徹しましょう。
B:適切な治療と休養により、おおよそ1-2カ月ほどで日常生活が送ることができるほどに回復します。この時期に復職してしまうと再発リスクが高まることが明らかになっております。そのリスクを小さくするために、生活リズムを整え、リハビリテーションを行っていく時期です。その役割をリワークが担います。
C:復職準備を具体的に進める時期になります。この時期は「積極的に活動するなど負荷をかけてトレーニングする」ことが求められます。また復職にむけて、職場とのやりとりや出勤訓練として実際に現場に行くことも出てくるため、復職に直面した現実的な不安から、一時的に症状が出てくることもあります。
このように、復職に向けては段階的な目標設定が必要となります。
休職の期間について質問を受けることが多いのですが、3カ月から12カ月ほどで個人や病状によって差が大きいです。共通するのは「週」の単位で回復するのではなく「月」の単位で回復していきますので、過度に焦らずゆっくりと治療に向き合うことが重要です。
活動内容
復職にあたり体力や生活習慣を整える必要性を考え、運動のプログラムや1日の行動を振り返る時間を設けています。
また、プログラムを通して自身の疾患、性格や考え方のくせを理解し、うつ状態に至ってしまった背景を分析し、復職後の再発予防について考えます。さらにグループワークを通して発言する力や、周囲との協調性を身につけるサポートをしていきます。集団生活における対人関係やストレス耐性について振り返り、復職後の対処方法を身につけます。
一週間の予定

・リワークプログラムは1クール3か月を目安としております。また、参加人数には定員がございます。希望時に定員に達していた場合には予約待機とさせていただくことがございます。待機期間中はデイケアSoleに通所し、規則正しい生活リズムを身につけることも重要と考えております。
プログラムの内容

うつ病治療の後半になると、おっくう感、意欲低下、興味・喜びの低下といったドパミンの不足に由来した症状からの回復がターゲットになります。この時期は薬物治療だけでなく、リハビリテーションが必要な時期となります。
リワークでは、個人プログラムを行いつつ、調理や運動などのグループ活動を通して達成感や喜びを実感すること、回復へのリハビリテーションが行われていきます。
当院でのプログラムの例を紹介していきます。
【個人ワーク/スキルアップ】
それぞれの目指す目標に関連した各種作業や勉強を行い、復職時に必要な集中力・作業能力・持続力を取り戻すためのトレーニングを行っていきます。
【運動プログラム】
体育館に移動して軽いスポーツや散歩など、体を動かす活動となります。復職に必要な体力づくりや、生活リズムを整えることを目標とします。適度な運動はドパミンの分泌を促進し、「天然の抗うつ薬」と言われるほど大切です。無理のない範囲で行っていきます。
【マインドフルネス】
1980年代にアメリカのJ.カバットジンがスタートさせ、シーガルらによってマインドフルネス認知療法が開発されました。第三世代の認知行動療法の一つで、うつ病の再発予防効果が臨床試験で認められています。「今ここにあるがまま」の中心対象(身体感覚)に意識を向けることで、感情や思考にとらわれない強い心を育んでいくことを目標に、解説とトレーニングを行っていきます。
【アサーション/グループワーク】
自分の持っている対人交流のくせについて考え、意見や気持ちを自分も相手も大切にした表現にできるように訓練を行っていきます。
【ストレスマネジメント】
日常生活においてストレスを感じる場面は多いです。ストレスの発生要因や気づき方、対処法などについて考えます。
【認知行動療法】
ものごとの受け取り方・考え方(認知)を理解し、バランスの取れた考え方や行動を導き出します。自生思考と呼ばれる認知が否定的であることが、病状に影響を及ぼしていることがあります。そのような認知を見直し、ストレスに上手に対処できるようになることを目指します。
【創作プログラム】
簡単な創作活動を通して、就労する上で必要な集中力を養います。調理、創作活動による達成感や喜びが、うつ病の後半の治療にはとても大切になってきます。
料金について
自立支援医療の適応が可能です。市町村や世帯の所得によって異なりますが、自己負担額は0~1割で、負担額の上限が決められていますので、それほど高い利用料にはなりません。
他院に通院している方も適応となります。
例:1割負担の場合:1日820円の自己負担となりますが、月あたりの上限額までの負担となります。
10時までに来所された方は無料でお弁当の注文が可能です。バランスのとれた食事をしっかり食べることも回復には重要です。詳しくはスタッフにお尋ねください。
利用開始までのご案内
当院通院中の方でリワークの利用を希望される方は、診察時に医師にご相談ください。当院に通院されていない方は、かかりつけの医師にご相談していただき、参加の許可が出ましたら紹介状をご用意の上、当院の初診予約をお取りください、その際にリワーク希望と申し出て頂けるとスムーズです。
当院の医師の参加許可が出ましたら、リワークスタッフが利用案内とインテーク面接を行います。インテーク面接では、これまでの生活歴、職歴、現在の体調や生活状況、復職に向けての目標などを丁寧に聴取いたします。利用に際しての各種書類にご記入いただき、利用開始となります。
ご不明な点は遠慮なくご質問ください。
~休職期間中の制度の確認をお勧めします~
有給休暇、病気休暇、休職の制度は各職場の就業規則により異なります。休職可能期間や休職の際に必要な診断書等の確認も併せて行いましょう。
また、休職期間中に利用できる給与制度も各職場により異なりますので会社に確認することをお勧めします。全国健康保険組合(協会けんぽ)に加入されている場合は、1年6カ月を限度に傷病手当金を受給できます。
休職期間中の経済的な不安を少しでも軽減することも回復には重要と考えます。
◎復職に向けての第一歩を踏み出しませんか?
当院では皆様の職場復帰を精一杯サポートしてまいります。
お問合せ先
当院デイケアSole(そーれ)、052-503-2727または診察時にお気軽にお問い合わせください。
リワークルームの様子
