主な疾患

重ね着症候群

 子どもの時に発達障害が見逃されて末診断のまま大人になり、学校や職場など様々な場面でうまくいかない、何らかの精神症状がみられる、といった方が受診されると、「重ね着症候群」と判明することがあります。

 「重ね着症候群」の定義は以下の通りです。18歳以上 (広義には16歳以上)で、知的障害がなく(IQ85以上)、初診時の主訴はさまざまで (種々の精神症状・行動障害など)、精神症状による診断も多岐にわたります (統合失調症・躁うつ病・うつ病・神経症・摂食障害・対人恐怖症・強迫性障害・境界性パーソナリティ障害・自己愛性パーソナリティ障害など)。こうした主訴や診断名の背後に高機能型の自閉スペクトラム症(広汎性発達障害)の傾向があっても、発達障害を疑われたことがない場合を「重ね着症候群」としています。
 
 一部の方に小児期・児童期・思春期に不登校や神経症などがみられます。しかし、多くの方は高い知能のために学校生活や学業などに適応することができます。
 そのため、就学時代は発達障害を疑われずに過ごし、診断が遅れ、重ね着症候群となることがあります。

【当院の考え方】
 「重ね着症候群」の方の背後にある高機能型の自閉スペクトラム症(広汎性発達障害)の傾向は、非常に軽微であることが多いです。高機能型の自閉スペクトラム症(広汎性発達障害)の傾向が、明確に表に現れている方は、ほとんどが小児期からアスペルガー症候群などが疑われていますが、「重ね着症候群」の方の場合では、家族や学校の先生など周囲で日常的に関わる人でさえ、発達の偏りにほとんど気づくことがないほど軽微なものが多いのが特徴です。

 ご本人やご家族が、乳幼児期から児童期・思春期・青年期・成人期と、発達障害診断にまつわる質問(対人関係における人との情緒的交流のあり方はどうか・自分の言動が相手に与える影響を推測できるか・知覚過敏・過剰記憶・こだわり・衝動的で自分をコントロールできないか、など)をされた時、振り返ってみると「そういえばそのような傾向があった」と気づくことが多いです。
 青年期・成人期にさまざまな症状を発症したために受診されて、初めて背景の発達障害傾向が明らかになり、それまでなかなか治らなかったり、長い間苦しまれた症状の治療につながることが、少なくありません。

 当院では、さまざまな症状が「重ね着症候群」から発生していないかを検討する為、診察において発達障害診断面接をさせていただきます。また必要に応じて心理検査などもおこない、総合的に判断し、診断・治療をおこなっています。
 そして、それぞれの患者さんの特徴をできるだけ詳細に知り、能力を活かして生活されることを目標として、治療・支援をしています。

【治療について】
 「重ね着症候群」の場合は、自閉スペクトラム症に応じた治療が必要となります。背後にある自閉スペクトラム症の特性に気づかず、不適切な治療を受け続けている方が多いのも、残念ながら事実です。
 当院では、「重ね着症候群」の方に従来の支持的・共感的精神療法だけでなく、心理教育や生活指導、療育的アプローチによる治療・支援を中心に行っていきます。

文献
1)衣笠隆幸:境界性パーソナリティ障害と発達障害―重ね着症候群について (精神科治療学 2004. 第19巻. 第6号 P693-699)
2)衣笠隆幸:パーソナリティ障害および病理的パーソナリティの診断、病理の理解と治療 (精神神経学雑誌 2017. Vol.109 No.2 P1151-1156)
3)衣笠隆幸:パーソナリティ障害の診断と精神分析的精神療法 (精神神経学雑誌 2011. Vol.113 No.2 P189-190)
4)衣笠隆幸:パーソナリティ障害と重ね着症候群 (精神科治療学 2014. Vol.29 No.7 P899-904)

主な疾患

  1. うつ病

    うつ病

    誰もが耳にしたことがあると思われる代表的な病気です。憂鬱な気持ちや意欲が出ないことが続いていませんか?

  2. 双極性障害(躁うつ病)

    双極性障害(躁うつ病)

    うつ状態だけでなく、極端に調子がよくなって活発な期間がある方は躁うつ病の可能性があります。うつ病とは治療が異なるので注意が必要です。

  3. 統合失調症

    統合失調症

    悪口を言われる、狙われているといった幻聴や妄想などを症状とする病気です。100人に1人くらいの割合でみられます。

  4. 認知症

    認知症

    物忘れ、新しいことが覚えられない、判断力の低下などにより日常生活に支障をきたす病気です。

  5. 適応障害

    適応障害

    強いストレスを受け続けると様々な心身の症状が出ることがあります。

  6. 自律神経失調症

    自律神経失調症

    自律神経(交感神経と副交感神経のバランス)が不調をきたすことで様々な心身の症状が出ることがあります。

  7. 不眠症

    不眠症

    なかなか寝付けない、何度も目が覚めるなど睡眠の問題で苦しんでいませんか?

  8. パニック障害

    パニック障害

    場所と時間を選ばず、突然パニック発作が生じ、日常生活に支障をきたす病気です。

  9. 強迫性障害

    強迫性障害

    強迫観念と言われる強い不安感を打ち消すための行動により、日常生活に支障をきたす病気です。

  10. 身体表現性障害

    身体表現性障害

    いくら検査しても病気が見つからないにも関わらず身体症状が持続し、日常生活に支障をきたす病気です。

  11. 社交不安障害

    社交不安障害

    会議や発表など注目を浴びる場面の時に強い不安感や身体症状が出ることで日常生活に支障をきたす病気です。

  12. 発達障害(自閉スペクトラム症)

    発達障害(自閉スペクトラム症)

    臨機応変な対人関係や、自分の関心・やり方・ペースが崩れることが苦手な特性を持つ発達障害のひとつです。ごく軽度から重度まで特性の程度は様々です。

  13. 重ね着症候群

    重ね着症候群

    自閉スペクトラム症が基底障害にあり、二次障害として様々な症状や病気を生じている状態です。

  14. 注意欠如多動症(AD/HD)

    注意欠如多動症(AD/HD)

    子供では多動や衝動性が目立ち、成人では不注意症状で困る方が多いです。発達障害のひとつで、近年注目度が増している病気です。

  15. 学習障害

    学習障害

    知能は正常にもかかわらず、特定の部分の学習が極端に苦手な特性をもつ発達障害のひとつです。知能が正常であるため気がつかれにくいようです。

  16. 分離不安

    分離不安

    母親などの愛着対象から離れることに対して、年齢と不相応に強烈な不安を感じる状態です。

  17. 愛着障害

    愛着障害

    養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子どもの情緒や対人関係に問題が生じる状態です。

  18. 場面緘黙症

    場面緘黙症

    家などでは普通に話すことができるのに、学校などの「特定の場面」で声を出すことができない状態が続くことです。

  19. 抜毛症

    抜毛症

    子どもに多く、自分で自分の毛髪を抜いてしまいます。

  20. チック症

    チック症

    子どもに多く、意図せずに声が出てしまったり、不規則な動きが出てしまう病気です。

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